内容紹介
本の中の本と称される聖書。聖書は多くの人の手によって書かれた、神と人間との歴史における出会いの物語です。今から3000年ほど前の紀元前10世紀頃にその最も古い部分が書かれ、紀元後2世紀に最後の書が書かれました。今では世界各国の言葉に翻訳されており、中でも「聖書協会共同訳」は最新の研究結果のもと、拡張高く美しい日本語で訳された新しい翻訳です。
聖書は大きく旧約聖書と新約聖書に分けられます。新約聖書にはイエス・キリストの生涯と、その後の弟子たちの活動の記録、および初代教会の間で交わされた手紙などが収められています。
この「新約聖書1」には、マタイによる福音書から使徒言行録までが収録されています。
目次
【マタイによる福音書】(28トラック・1071節・227分)
マタイによる福音書は、旧約聖書に精通した読者を対象にイエスの生涯を描いた書物です。著者はイエスが旧約聖書において神から遣わされたメシアであることを強調しながらイエスの歩みを物語ります。人々に神の民の一員であることの意味を伝えるイエスの宣教を描いた箇所は、モーセ五書のように5部構成でまとめられており、特に人々にいかに生きるかを伝える山上の説教は、モーセがシナイ山で律法を与えたように描かれています。この福音書は、イエスが伝えた福音が旧約聖書の律法と教えに基づいていることを示しつつ、ユダヤ民族だけではなく、すべての人々が神を信じ、隣人を愛するように招いています。
【マルコによる福音書】(16トラック・679節・151分)
四福音書の中で最も短く、最古のものとされているマルコによる福音書は、強い物語性をもって生き生きと、イエスの奇跡と癒し、苦難、死を描きます。最初の1節で「神の子イエス・キリストの福音」と始まるこの福音書は、読者が「イエスとは誰なのか」を悟る手がかりを福音書全体に散りばめており、推理小説のような魅力すらあります。また、異なる文化圏の読者にも理解できるよう書かれており、イエスは旧約聖書の預言をどのように成就したのか、どのような意味で神の子なのか、なぜ死んだのか、どのように再び来るのか、新しい神の民はいかに生きるべきかなど、重要な主題について語っています。
【ルカによる福音書】(24トラック・1150節・239分)
ルカによる福音書は、使徒言行録と合わせた2巻ものの第1巻で、伝道者パウロの同伴者であるルカが、イエスの誕生から昇天までの詳細を、友人または支援者であるテオフィロに向けて報告、献呈する形で書かれています。イエスの誕生物語や、善いサマリア人、放蕩息子などよく知られたたとえ話の多くが記録されており、四福音書の中でも聖霊や祈りの重要性を強調しています。また、貧しい人々への思いやりも主題としてあることが特徴です。後70年以降、非ユダヤ人である著者が、ギリシア・ローマの歴史家・伝記作家の文体を用いて執筆したと考えられています。
【ヨハネによる福音書】(21トラック・879節・185分)
「初めに言（ことば）があった」から始まるヨハネによる福音書は、他の福音書とは異なる視点でイエスの生涯と言葉を伝える書です。後70年以降、イエスの教えを受け入れたユダヤ人が共同体から排斥されていった状況下で、宣教を強く意識して書かれたと考えられています。ヨハネ福音書は、ガリラヤとエルサレムを舞台に、病者の癒しや、嵐の鎮静、死者の蘇生など数々の奇跡を通じて、積極的にイエスが神の子・メシアであることを示しています。またイエスに従う者たちと、従うことができなかった者たちや敵対者との葛藤を鮮明に描いているのも特徴です。
【使徒言行録】(28トラック・1003節・221分)
ルカによる福音書の続編である使徒言行録は、エルサレムから帝国の首都ローマに至る福音の広がりを軸に、最初のキリスト者たちの宣教や教会の成り立ちを描いています。イエスの召天と聖霊降臨の出来事から始まり、前半はイエスの弟子（使徒）たちによる宣教活動と幾多の奇跡が詳細に記述され、初期のキリスト教共同体がイエスの教えをどのように広げていったか、かいま見ることができます。後半では、敵対者から回心し、伝道者となったサウロ（パウロ）による地中海沿岸の巡る3回の宣教旅行が中心テーマとなり、ユダヤ人から他の民族へ福音が広がっていく様子が描かれています。
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