上方講談 現代怪談の世界
近年、注目を浴びている、日本の伝統話芸「講談」。
「冬は義士 夏はおばけで飯を喰い」と川柳に詠まれたほど、
講談師は夏になると怪談を語ってきている。
クーラーのなかった時代、観客は講談師の語る世界に身をゆだね、
背筋を凍らせ、暑い夏を忘れた。
講談師の旭堂南湖が贈る現代怪談。
故きを温ねて新しきを知る。
名調子で語る「現代の怪談」ここにあり。
内容紹介
「タイのナーン・ナーク」(11分)
先月、タイに行ってきました。タイは微笑みの国とも呼ばれ、人々の笑顔が素敵な国です。北はミャンマー、ラオス、東はカンボジア、南はマレーシアに囲まれていて、自然豊かな仏教国で、あちこちにお寺があります。首都がバンコク。少し北の方へ行けば、アユタヤというところがあります。戦国時代、関ケ原の合戦や大阪の陣で、戦いに敗れた武将が朱印船に乗ってタイへ渡りました。山田長政がタイで大活躍をした話などは、講談にも残っております。さて今回はタイで聞いてきた怪談を集めました。
「タイの交通事故」(4分)
日本でも交通事故で亡くなった方があると、遺族や友達がその事故現場の道路脇に、お花、それに亡くなった方が好きだったお酒や飲み物、お菓子を供えることがありますね。タイは交通事故が非常に多いところです。交通事故の死亡率が世界でワーストワンの年もありました。
「タイのソンテウ」(8分)
日本の怪談で有名なのがタクシー怪談。ある雨の晩、ひと気のないところをタクシーが走っていると道端に女性がポツンと立っていた。全身ぐっしょり濡れている。運転手がタクシーを思わず止めた。ふと気が付くといつの間にか、女性は後部座席に乗っていて「行先は」と聞くと「墓場へ」。運転手はドキリとした。夜遅くに墓場へ行く人があるのか。首をひねりながら車を走らせる。後部座席の女性は黙ったまんま。やがて墓場へ着いた。「お客さん」と声をかけたが返事はない。後ろを振り返ってみると女性の姿はない。後部座席がぐっしょりと濡れていた。誰しも一度は聞いたことがある有名なタクシー怪談。古くはタクシーではなく、乗り物が人力車や駕籠だったころからこういう話はあるそうで…。
「タイの仏間」(7分)
タイの五十代の女性に聞いたお話。この女性には双子の子供がおりました。ともに女の子。家は裕福ではなく、トタン屋根の家に住んでおりました。庭には木や草が生えていて緑が豊か。庭の隅にコンクリートを積み上げて作った物置があり…。
「タイの学校」(6分)
タイでも、いわゆる心霊スポットと言われるところがありまして、病院の跡地であるとか、刑務所の跡地、大量殺人の現場。多くの人が亡くなったところは、誰言うともなく、心霊スポットと言われるようになるそうです。この大学の教室もそうでした。ストーカー被害にあった男子生徒がありまして…。
「タイのエレベーター」(6分)
バンコクに国立大学がありまして、今から50年近く前、大変な事件がありました。1976年10月6日の水曜日に事件が起こり、「血の水曜日事件」と呼ばれています。大学で政府を批判する集会を行っていた学生や市民団体が約一万人。そこへ政府が国境警備隊や警官隊を投入して攻撃をした。公式発表では集会参加者の四十六人が死亡したそうですが、実際はもっと多く亡くなったという声もあるそうです。
「タイの首長族」(8分)
チェンマイには観光名所も色々ありますが、有名なのがワットプラタート・ドーイステープ。ワットというのは寺院、お寺のことです。今から640年前に建てられたお寺で、標高千メートルの山の上に建っている。多くの観光客や地元タイの方がお参りに来ていまして、蓮の花と線香をお供えしています。展望台もあり、チェンマイの街が一望できます。誠に景色の良いところです。
「タイの赤ん坊」(5分)
これは悲しい事件です。2010年の秋、お昼すぎ。バンコクの南にある市場では、お客さんで賑わっていて、それぞれが買い物をしていた。すると、一匹の汚い野良犬が口に黒いビニール袋をくわえてヨロヨロと歩いている。野良犬の通った後はプーンと臭い匂い。腐臭がした。店を出しているおばちゃんが叫んだ。「あの犬はなんだ。誰か追っ払って。臭くて仕方がないよ」。それを聞いた隣の店のおじさんが野良犬を追いかけた。ヨロヨロと逃げる野良犬。口にくわえいたビニール袋からゴロッと落ちたのが何やら肉の塊だ。なんだろうと、おじさんがそれを見ると、腐った赤ん坊の頭だった。
「タイの幽霊に会いに」(7分)
北方の山奥にきれいな滝がある。そこに美しい女性の幽霊が現れるという。なんでも、好きな男性が滝壺で溺れてなくなってしまい、その後を追うようにして女性も亡くなった。その女性の幽霊が夜な夜な現れて月明かりの下で水浴びをしているという。その幽霊を見に行こうと、二人の男性がそれぞれバイクに乗って行くことになった。途中の道で気をつけなければいけないところがあり…。
「タイのノックする音」(5分)
パタヤに四階建てのマンションがある。そのおばさんは三階の部屋に住んでいるのだが、隣の部屋には二十代の若い女性がいて、大層美しく、また愛嬌があって、周りの男性から好かれていた。ある日のこと、マンション内を腐ったにおい、腐臭がするようになった。マンションの清掃係がにおいの元を辿ってみると一つの部屋に行き当たった。二十代の若い女性の部屋だ。
「タイの犬」(5分)
タイの田舎には野良犬がよく現れる。田んぼの畦道を一匹の犬のようなものが歩いている。犬のようなものと言ったのは、確かに四足で歩いて尻尾があって、体つきは犬に違いないのだが、奇妙なのは顔だ。ガラスの瓶がすっぽりと顔にはまっている。
「タイ人の語る富士樹海」(4分)
タイ人には怪談好き、ホラーファンが多く、彼らも日本の青木ヶ原樹海はよく知っています。日本は豊かな国なのに、どうして自殺するんだ。タイ人から見ると不思議だが、おそらく競争社会で、競争に破れたり、一度社会のレールから外れると、再びそのレールに戻ることは難しい。また、借金を抱えて、誰にも頼れず絶望する人がいるんだろうと、日本社会の分析もしていました。
「タイの毒殺」(6分)
今、タイで恐ろしい事件が報道されています。バンコクに住む三十六歳の女性の容疑者。一緒に旅行中の友人を毒殺した疑いがある。友人の遺体からは猛毒のシアン化合物が検出された。ところが、この容疑者の周りで亡くなったのがこの友人だけではない。他にも十三人いるという。まだ事件の全容が解明されていませんが、実に恐ろしい。
「タイの祈祷師」(8分)
タイの怪談を聞くと、日本と似通っているところもありますが、やはりちょっと違うな、日本ではあまり聞かない話だなと思うこともあります。これもそんな話です。タイは都会を離れて田舎へ行くと、昔の日本のような昭和や戦前の田舎の風景が今でも残っております。去年12月、実際にあったお話です。
「タイの犬 その2」(5分)
カンボジアとの国境近くの村で、家畜が殺されることが多くなった。アヒルや鶏は全部食われてしまった。どれも噛まれ食いちぎられて死んでいる。人間の仕業ではない。野犬に違いない。しかもこれだけの死骸を作るのだから大群だ。野犬の群れだと、皆が思った。
「タイの旅行鞄」(6分)
タイの怪談、奇譚、不思議な話ばかり、語って参りました。タイは本当に良いところで人が優しくて親切で、美しいお寺もあり自然も豊か。また食べ物が美味しい。パッタイ、トムヤムクン、ガイヤーン、カオマンガイ。訪れたことのない方は、これをきっかけに、ぜひタイ旅行に出かけて頂きたいと思います。一生の思い出に残るような、素晴らしい旅になりますように、祈っております。皆さんの中で、不思議な体験、怖い体験があれば、旭堂南湖まで教えて頂けましたら幸いです。
旭堂 南湖（きょくどう なんこ） プロフィール
講談師。
1973年生まれ。
滋賀県出身。
大阪芸術大学大学院修士課程卒業。
1999年、三代目旭堂南陵（無形文化財保持者・2005年死去）に入門。
2003年、大阪舞台芸術新人賞受賞。
2010年、文化庁芸術祭新人賞受賞。
2015年、『映画 講談・難波戦記-真田幸村 紅蓮の猛将-』全国ロードショー。主演作品。
2019年、CD「上方講談シリーズ4 旭堂南湖」発売。「血染の太鼓 広島商業と作新学院」「太閤記より 明智光秀の奮戦」収録。
OKOWA胎動出場
怪談グランプリ2019出場
怪談最恐戦2019ファイナル出場
東大阪てのひら怪談優秀賞受賞
ZOOMを使った「オンライン講談教室」も好評。
講談や怪談の語り方をマン・ツー・マンで懇切丁寧に指導し、普及に努めている。
講談師・旭堂南湖公式サイト https://nanko.amebaownd.com/
Twitter http://twitter.com/nanko_kyokudou
|
ダウンロード販売
MP3
103分 16ファイル 2023年10月発売
