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夢野久作 死後の恋

[オーディオブック] 死後の恋

夢野久作
パンローリング
マンスリープラン対象商品 ダウンロード販売 MP3 約73分 33.8MB 6ファイル 2011年10月発売
本体 286円  税込 314円

  

マンスリープラン対象商品

サンプル再生3から10分程度無料で試聴できます。

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内容紹介

あなたは近頃、この浦塩(ウラジオストク)の町で評判になっている、風来坊のキチガイ紳士が、私だという事をチットモ御存じなかったのですね。ハハア。ナルホド。それじゃそうお思いになるのも無理はありません。 泥棒市に売れ残っていた旧式のボロ礼服を着ている男が、貴下のような立派な日本の軍人さんを、スウェツランスカヤ(浦塩の銀座通り)のまん中で捕まえて、こんなレストランへ引っぱり込んで、ダシヌケに、 「私の運命を決めて下さい」 などと、お願いするのですからね。キチガイだと思われても仕方がありませんね。

お笑いになると困りますが、私はこう見えても生抜きのモスコー育ちで、旧ロシアの貴族の血を享けている人間なのです。そうして現在では、ロマノフ王家の末路に関する「死後の恋」という極めて不可思議な神秘作用に自分の運命を押えつけられて、夜もオチオチ眠られぬくらい悩まされ続けておりますので…実は只今からそのお話をきいて頂いて、あなたの御判断を願おうと思っているのですが。

勿論それは極めて真剣な、且つ歴史的に重大なお話なのですが…。

少々前置が長くなりますが、註文が参ります間、御辛棒下さいませんか…ハラショ…。

一見四十過ぎに見間違えるボロ礼服を来た若者ワーシカ・コルニコフは、 大正七年の八月のある夜。一夜にして白髪初老の男性になるほどの不思議な体験をする。

ロシア革命の最中。モスコーの貴族の息子であったワーシカは家族・家産を奪われ、 その自暴自棄から、とある斥候部隊に配属される。

そこで出会った境遇の似た青年リヤトニコフとの友情話は、 ワーシカの欲望と革命の泥沼の中で意外な結末を迎える。

一夜にして一人の青年を狂わせた『死後の恋』とは。

その宝石は本物か。

その恋は本物か。

CONTENTS

一:
ウラジオストクの街中で、とある日本軍軍人が白髪交じりの身なりの汚い男性に声を掛けられる。男は軍人を半ば強引にレストランに引き込み、こう語った。「私の運命を決定(きめ)てください」と…。

二:
男の名はワーニカ・コルニコフ。貴族の血を引く24歳の青年が、かくもどうしてそのような身なりになってしまったのか。青年は語り始める。彼はペトログラードの革命で、家族や家産を一時に奪われ極端な窮迫に陥ってしまった。自暴自棄から一番嫌っていた軍隊に入った彼は、部隊の編成換えで一人の青年と運命的な出会いをする。彼の名はリヤトニコフ。彼もまた帰属の末裔であるらしく、境遇の似た二人は兄弟のように親しくなっていった。

三:
ある夜。リヤトニコフが切羽詰った表情で持ちかけてきた相談に、ワーニカは驚く。彼が親の形見として後生大事に持っていたあるものを見せられたからだ…。

四:
ワーニカは司令部勤務から心換えし、リヤトニコフと共に連絡斥候に配属を希望した。十数名の一分隊は目的地であるドウスゴイ付近の原っぱまで行軍してきていた。そこの湿地帯には、、コンモリとしたまん丸い濶葉樹の森林が離れ島のようになって、草原のまん中に浮き出していた。世界はどこまでも平和に思えたその時だった…。草原に激しい銃撃が鳴り響きわたる。

五:
一斉射撃を食らった部隊が散り散りに逃げ込んだ濶葉樹の森林で、再びの銃撃を聞いていたワーニカは息を潜めて思う。耐え難いほどの銃声はどちらの軍のものだったのだろうか。最初の銃撃で唯一人負傷したワーニカは、何故か重い体を引きずりながら森に引き寄せられていく。暗闇の森の中でワーニカが見たものは…。ワーニカを森に引き寄せたのは…。

六:
全ての話を終えたワーニカに、軍人が"決めた"運命は…。

編集者からひと言

本書は明治・大正の作家、夢野久作によって書かれた哀しくも不思議な世界である。

日常の中に非日常的世界の入り口を匂わす世界観は、江戸川乱歩、HP・ラヴ・クラフトなどにも通じ、倒錯した世界に踏み込んでしまいそうになる醸成された雰囲気がある。

SF作家、探偵小説家、幻想文学作家として人気を博した夢野久作の世界観をラジオドラマ風に再現しました。

夢野久作(ゆめの・きゅうさく)

日本の小説家、SF作家、探偵小説家、幻想文学作家。
1889年(明治22年)1月4日 - 1936年(昭和11年)3月11日。
他の筆名に海若藍平、香倶土三鳥など。現在では、夢久、夢Qなどと呼ばれることもある。福岡県福岡市出身。日本探偵小説三大奇書の一つに数えられる畢生の奇書『ドグラ・マグラ』をはじめ、怪奇色と幻想性の色濃い作風で名高い。またホラー的な作品もある。

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