上方講談 古典怪談の世界
近年、注目を浴びている、日本の伝統話芸「講談」。
「冬は義士 夏はおばけで飯を喰い」と川柳に詠まれたほど、
講談師は夏になると怪談を語ってきている。
クーラーのなかった時代、観客は講談師の語る世界に身をゆだね、
背筋を凍らせ、暑い夏を忘れた。
講談師の旭堂南湖が贈る古典怪談。
故きを温ねて新しきを知る。
名調子で語る「日本の怪談」ここにあり。
内容紹介
吉原奇聞小夜衣草紙 その九「小夜衣の亡霊」(28分)
浜田屋源兵衛という材木商。伜が源次郎と申しまして、ふとしたことで吉原へ足を運び、旭丸屋の小夜衣という花魁と深間になりました。末は夫婦という起請文を取り交わします。ところが、亀戸の梅屋敷へ梅見に参りました源次郎が、見初めた女というのが、松平出羽守の留守居役、大野専左衛門の娘、お八重。縁談の申し込みをすると、「浜田屋は大金持ちじゃ。娘をやっても良い」
とんとん拍子に縁談がまとまりましたが、小夜衣と起請文の取り交わしているという。「そんなものが後から出てきたら困ることになる。今のうちに取り戻しておこう」
というので番頭の六兵衛と治兵衛を旭丸屋にやりました。金を持って参りまして、起請文を取り戻すことになったが、小夜衣は源次郎を心底愛しておりまして、僅かな金で大事な若旦那を捨ててしまったと言われては残念。小夜衣は自害しようとカミソリで喉をついたが死ねない。立ち上がって柱に頭をぶつけるとダラリと左の目が飛び出して、とうとう死にました。壮絶な最後。源次郎の婚礼の晩、小夜衣の亡霊が出てきて…。
吉原奇聞小夜衣草紙 その十「旭丸屋の怪」(28分)
丁度、五月十九日の夜、大雨が降ってきた。こうなるとお客は来ない。いつも賑やかな旭丸屋が今夜はシーンとしている。昼から遊びに来ているお客が五人。旭丸屋の遊女は二十一人。だから、十六人はお茶をひく。小夜衣の亡霊は、名刀の威力で、浜田屋に祟ることができない。そこで、旭丸屋にやってきて…。
吉原奇聞小夜衣草紙 その十一「手振坊主」(28分)
旭丸屋はすっかり建物を潰してしまって、唐模様の普請をして、新しく建て替えると、珍しいのを好むのは人の常。なかなかの繁昌。
お盆の七月十三日。当時はお盆になるとどこでも精霊棚を飾り、この日は吉原に来る客もなし。ひっそりとしている。その頃、大変に粋な人で、伊勢屋源兵衛さん。流石にこの日は他の客もあるまいから、女郎総揚げにして遊んだら面白かろう。年は五十ぐらいの幇間で寿老庵。その他、幇間五、六人、芸者衆十人を連れてやってきた…。
吉原奇聞小夜衣草紙 その十二「大団円 浜田屋没落」(25分)
不義の富貴は浮かべる雲。 不正をして儲けた金は浮雲のようにはかないものである。源次郎、恐ろしく酒を飲んで寝たが、ふと目が覚めると傍に寝ているお八重。お八重の顔が小夜衣に変わった。目玉がダラリ飛び出して、源次郎を見てニヤニヤと笑った。源次郎は逆上して、いきなり自分の脇差しを取り出して、スパーリ引き抜いて……。
旭堂 南湖(きょくどう なんこ) プロフィール
講談師。
1973年生まれ。
滋賀県出身。
大阪芸術大学大学院修士課程修了。
1999年、三代目旭堂南陵(無形文化財保持者・2005年死去)に入門。
2003年、大阪舞台芸術新人賞受賞。
2010年、文化庁芸術祭新人賞受賞。
2015年、『映画 講談・難波戦記-真田幸村 紅蓮の猛将-』全国ロードショー。主演作品。
2019年、CD「上方講談シリーズ4 旭堂南湖」発売。「血染の太鼓 広島商業と作新学院」「太閤記より 明智光秀の奮戦」収録。
2021年、『旭堂南湖講談全集』(レベル)発売。
2021年、滋賀県文化奨励賞受賞。
2023年、『滋賀怪談 近江奇譚』(竹書房怪談文庫)発売。
2024年、『上方講談という愉しみ』(寿郎社)発売。
ZOOMを使った「オンライン講談教室」も好評。
講談や怪談の語り方をマン・ツー・マンで懇切丁寧に指導し、普及に努めている。
講談師・旭堂南湖公式サイト https://nanko.amebaownd.com/
X https://x.com/nanko_kyokudou
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