上方講談 古典怪談の世界
近年、注目を浴びている、日本の伝統話芸「講談」。
「冬は義士 夏はおばけで飯を喰い」と川柳に詠まれたほど、
講談師は夏になると怪談を語ってきている。
クーラーのなかった時代、観客は講談師の語る世界に身をゆだね、
背筋を凍らせ、暑い夏を忘れた。
講談師の旭堂南湖が贈る古典怪談。
故きを温ねて新しきを知る。
名調子で語る「日本の怪談」ここにあり。
内容紹介
有馬猫騒動・その一「しじみ売り」(28分)
化け猫が出てくる講談はたくさんあります。一説には百種類もございまして、「百猫伝」と申します。人を助ける猫もいれば、人に祟る恐ろしい猫もいます。その中でも有名なのが二つ。「鍋島猫騒動」と「有馬猫騒動」。鍋島猫騒動は、佐賀藩、鍋島家で起こった化け猫の物語。これは古典怪異譚四巻から、八巻まで、「佐賀怪猫伝」というタイトルで、長い長い物語を申し上げました。今回は「有馬猫騒動」を申し上げます。寛政時代と申しますから一七八九年から一八〇一年。今から二百年以上前、第五代横綱である小野川喜三郎が、赤羽橋にある久留米藩、有馬公のお屋敷、七つ蔵の前にある火の見櫓で、化け猫を退治したというお話。さて、ここにございましたのは、しじみ売りの与吉。
有馬猫騒動・その二「お滝の方」(31分)
正月も過ぎて、早二月に相成って参りますると、有馬家の下屋敷の彼岸桜が咲きかかった。そこで有馬公の奥方、千代姫様より、明十二日下屋敷へ見物に参るであろうと仰せになる。御用人高橋文左衛門は中間を従え、十一日の日に下屋敷に乗り込んで参り、お留守居役、依田小左衛門という人と打ち合わせをして、明日千代姫様がお越しになった時の御馳走はこれこれの御献立、床の間の軸や置物はこうこうと、何もかも不都合のないように万事取り計らいをなし、はや日の暮れ頃に御用を済ませ、表へ出かける。すると、雨がポツリポツリと降り出して来た。さあ、どうなる。
有馬猫騒動・その三「老女岩波」(34分)
しじみ売り与吉の姉、お滝は、有馬公の側女となった。しかるに喬木も風の為に倒れ、水清ければ魚棲まずでござりまして、ここに老女の岩波という者がある。これが大いにお滝の方をそねみまして、
「あのお滝。元は業平橋でしじみを拾い、それを弟に売り歩かせて、ようよう母親を養うておったる身分。それが今は有馬の殿様の側女となって、お部屋お滝の方とは何事じゃ。この上は下々の女中に言いつけて、お滝の悪口を言わせ、自らこのお屋敷にいることが出来ないようにしてくれん」
とお滝に、嫉妬心を起こし、これから女中に言いつけて、流言のはかりごとを用いました。さあ、どうなる。
有馬猫騒動・その四「火の見櫓」(29分)
与吉は紐を解いて文箱を開けてみると、中には姉、お滝の書き置きが一通。母様と与吉殿と認めてある。
「おっかさん。書き置きだよ」
「書き置きと言えば、心がかり。ともかくも与吉。早くその手紙の封を切って読んで聞かしてくれ」
そこで与吉は封を切って、手紙を読んでみると、わらわ有馬家へ上がって幸せにもお部屋とまでになりましたが、老女岩波、並びに呉竹、お虎などと言える女中に、しじみ屋しじみ屋と言って蔑まれ、無念の余り、生きておることができないゆえ、不幸ながら自害をして相果てます。我が亡き後は、与吉、そなたが姉に成り代わり、母様へ孝行を尽くしてくれという趣が詳しく書いてある。さあ、どうなる。
旭堂 南湖(きょくどう なんこ) プロフィール
講談師。
1973年生まれ。
滋賀県出身。
大阪芸術大学大学院修士課程卒業。
1999年、三代目旭堂南陵(無形文化財保持者・2005年死去)に入門。
2003年、大阪舞台芸術新人賞受賞。
2010年、文化庁芸術祭新人賞受賞。
2015年、『映画 講談・難波戦記-真田幸村 紅蓮の猛将-』全国ロードショー。主演作品。
2019年、CD「上方講談シリーズ4 旭堂南湖」発売。「血染の太鼓 広島商業と作新学院」「太閤記より 明智光秀の奮戦」収録。
OKOWA胎動出場
怪談グランプリ2019出場
怪談最恐戦2019ファイナル出場
東大阪てのひら怪談優秀賞受賞
ZOOMを使った「オンライン講談教室」も好評。
講談や怪談の語り方をマン・ツー・マンで懇切丁寧に指導し、普及に努めている。
講談師・旭堂南湖公式サイト https://nanko.amebaownd.com/
Twitter http://twitter.com/nanko_kyokudou
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