上方講談 現代怪談の世界
近年、注目を浴びている、日本の伝統話芸「講談」。
「冬は義士 夏はおばけで飯を喰い」と川柳に詠まれたほど、
講談師は夏になると怪談を語ってきている。
クーラーのなかった時代、観客は講談師の語る世界に身をゆだね、
背筋を凍らせ、暑い夏を忘れた。
講談師の旭堂南湖が贈る現代怪談。
故きを温ねて新しきを知る。
名調子で語る「現代の怪談」ここにあり。
内容紹介
「ごりんさん」(18分)
これは旭堂一海さんに聞いたお話。一海さんは、私の後輩で、現在二十三歳の好青年です。彼は鳥取県鳥取市の出身でして。地元に、鳥取城があるんですね。戦国時代、豊臣秀吉は、この鳥取城を二度、攻めていまして、一度目は、天正八年、山名豊国が城主。豊国は三ヶ月ほど籠城したが、やがて降伏する。ところが、天正九年、吉川経家が新たに、城主となり、兵を集めて、籠城した。これが後に、「鳥取城の餓え殺し」と呼ばれる悲惨な戦いとなった…。
「多鯰ヶ池」(10分)
これも旭堂一海さんに聞いたお話。鳥取砂丘のすぐ側に多鯰ヶ池(たねがいけ)があります。池の周囲が三・四キロというのですから、結構大きな池ですね。一海さんは、小さい頃、おばあちゃんに「多鯰ヶ池には行ったらいけん」と言われていました。子供のことですから、水辺は危ない、溺れては大変、危険だということでしょう。でも、それだけではなかったのかもわかりません…。
「三面地蔵尊」(8分)
今年の夏に、NPO法人いわてアートサポートセンターの主催事業で、一週間、岩手県盛岡市に行ってきました。これは盛岡市に滞在して、その地域の方々と交流して作品を作るという企画です。私と旭堂一海さんの二人で盛岡に一週間行ってきました。そこで鉈屋町の皆さんに地元の伝わる不思議な話はないかと伺いますと、こんなお話を教えて頂きました…。
「いたこ」(6分)
岩手の方に聞いた話。昔はいたこさんが身近にいて様々な悩み事に答えてくれる、相談に乗っていくれる、そんな存在だったそうです。そして、中には霊能力のあるいたこさんも本当にいた。逆に、霊能力もまったくない偽物のいたこも多くいたそうです。どちらかというと、本物よりも偽物の方が多いなんてことを仰っていました…。
「妙国寺の蘇鉄」(11分)
堺市に妙国寺というお寺があります。当時、この寺には立派な蘇鉄がありました。蘇鉄は古代から生えている植物です。蘇は、蘇生する、蘇るという意味。枯れかかった蘇鉄の根本に、古い釘を埋めたり、釘を直接、幹に打ち込んだりして鉄分を与えると、また元気になると言われています。戦国時代、妙国寺には樹齢七百年の蘇鉄がありました…。
「ドレッドヘア」(8分)
四十代の女性Kさん。小学五年生の頃、英語の授業で簡単な英単語を習った。英語って面白いなあ、外国人と英語をしゃべってみたいなあと思った。ところが、英語を教えてくれた先生ももちろん日本人。Kさんの住んでいるところは田舎。これまで、テレビで外国人を見たことがあっても、実際に外国人を見たことはほとんどなかった。その日は雨だった…。
「地底人」(8分)
五十代の男性Aさん。小学六年生の頃、なにか特別なきっかけがあったわけでもないが、クラスでいじめられるようになった。それまでは仲良く遊んでいた友達も、一緒にいるといじめられると思ったのか、誰も近寄らなくなった。いじめてくるのはKだ。殴られたり、蹴られたりという、直接的な暴力はなかったけれど、バカにされたり、変なあだ名で呼ばれたりしていた。平日は、父も母も仕事に行っており、鍵っ子だったAさん。誰もいない家に帰るのが嫌いだった…。
「チョコ」(6分)
二十代の女性でHさん。会社で残業続き、仕事量の割に、人員が少ない。上司からは仕事が遅いと言われ、その残業代も貰えない。そんな暮らしをしていた日曜日。台所にリンツの丸いチョコレート。リンドールがあった。リンツのチョコは好きで、時々買って食べるが、それが台所にポツンとあった。いや、こんなところにリンツのチョコがあるはずがない。なんで? 不思議に思って、指でつまみ上げると…。
…。
「貞子」(8分)
五十才の女性、貞子さん。本名です。貞子さん。その名前を聞くと、怪談好きなら、「ああ、貞子」と思うでしょう。そう、映画「リング」で、おなじみの貞子。貞子さんと漢字も一緒。貞子さんの年代、クラスの女子、三分の一ぐらいが名前の下に「子」という字がついた。やがて、映画「リング」が公開され、高校生の貞子さん、丁度、長いきれいな黒髪だったそうで…。
「小さいおじいさん」(8分)
二十代の大学生T君。同じ大学のO君とY君。三人は友達でいつも一緒に遊んでいる。今日も授業が終わって、そのまま教室でスマホを触りながらおしゃべりをしていた。T君は声を潜めて、「Oの肩に小さいおじいさんが憑いてんねん」「またまたまた。そない言うて、怖がらせよう思うて」「いや、ほんま」「嘘やろ」「ほんま。視えるんや、ぼんやりと、小さいおじいさん」。T君曰く、それは本当に視えるんだそうです。すると…。
「煙」(6分)
Oさんは大学生で、アパート暮らし。こたつに入って、ぼんやりとテレビを見ていると、こたつのテーブルから、白い糸がスーッと上へ伸びていく。何? 最初は蜘蛛の糸かと思った。古いアパートなので、時々蜘蛛が出てくる。今、目の前をスーッと下から上に伸びていく。どうやら蜘蛛の糸ではなさそうだ。手を伸ばすと…。
「イタチザメ」(8分)
三十代の女性、Fさんに聞いた話。数年前のこと。お友達のMちゃんとは中学校の頃からのお友達なんですが、そのMちゃんの様子が何かおかしくなってきた。以前はよく一緒に遊びに出かけていたのに、ここ二、三週間ずっと家にこもっている様子。最後に会ったのは一ヶ月前だったか。レストランでMちゃんが水を一口飲もうとグラスを持ち上げた時、キャッと言ってテーブルにグラスを落としてしまった…。
「隣の家」(7分)
雄一さんは三十代の男性、現在では会社員をしている。コロナ禍になってから、実家へは帰れていない。ワクチンも打ったし、久しぶりに実家へ帰ることになった。その前日、会社の帰りに近所で火事があった。消防車が何台もやってきて、野次馬もどんどん増える。居酒屋が燃えているのだが、店から出る煙が真っ黒。雄一さんは足を止めてしばらく火事を眺めていた。焦げ臭い。このニオイ、知っている…。
旭堂 南湖(きょくどう なんこ) プロフィール
講談師。
1973年生まれ。
滋賀県出身。
大阪芸術大学大学院修士課程卒業。
1999年、三代目旭堂南陵(無形文化財保持者・2005年死去)に入門。
2003年、大阪舞台芸術新人賞受賞。
2010年、文化庁芸術祭新人賞受賞。
2015年、『映画 講談・難波戦記-真田幸村 紅蓮の猛将-』全国ロードショー。主演作品。
2019年、CD「上方講談シリーズ4 旭堂南湖」発売。「血染の太鼓 広島商業と作新学院」「太閤記より 明智光秀の奮戦」収録。
OKOWA胎動出場
怪談グランプリ2019出場
怪談最恐戦2019ファイナル出場
東大阪てのひら怪談優秀賞受賞
ZOOMを使った「オンライン講談教室」も好評。
講談や怪談の語り方をマン・ツー・マンで懇切丁寧に指導し、普及に努めている。
講談師・旭堂南湖公式サイト https://nanko.amebaownd.com/
Twitter http://twitter.com/nanko_kyokudou
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