内容紹介
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。
時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。
このシリーズは日本の漢詩について、さまざまの立場で歴史の舞台に登場した人々にスポットをあて、その作品と人生を解説する、という方式で進めてまいります。
日本人の伝統詩歌としては、漢詩・短歌・俳句があげられるでしょう。この三形式のなかでは、親しまれた期間の長さにおいても、創作の歴史の長さにおいても、漢詩が抜きんでています。何しろ日本人は既に飛鳥時代、つまり七世紀後半ごろから、漢詩を「読む」だけではなく、「自分で作る」という段階に入っていました。以来、今日まで千三百年以上にわたり、漢詩は日本人の心を表す形式として親しまれているのです。
漢詩に表れた日本人の心、その特質は何かと言えば、それは「公と正義の感覚」ということになります。花鳥風月や、男女の心の機微は、漢詩では最も重要な関心事にはなりません。そうではなく、社会がどうあるべきか、それを目指す中で個人はどうふるまうべきかを模索し、その考察の結果やそれに伴うさまざまの感慨を表現する、それが漢詩の本道です。
このシリーズによって、そのような漢詩の魅力と奥深さを少しでもお伝えすることができれば幸いです。
第三回 風狂の彼方に――一休宗純
一休宗純(1394〜1481)は、室町時代前期の禅僧(臨済宗)。狂雲子と号しました。京都の生まれで、父は後小松天皇(ごこまつてんのう)と伝えられます。室町幕府の権威が急速に衰えてゆく時代に成長し、尊王の立場から幕政を批判、また当時の禅宗の世俗化に強く反発し、本来の禅宗のあり方を模索しつづけました。生涯を通じて一定の寺に住せず、各地を行脚(あんぎゃ)して武士・町人たちと自由に交際、禅の普及に努めました。その奇才と奔放な言動は、多くの逸話を生んでいます。
一休は詩・連歌・書・画に秀でていましたが、ここでは彼の詩について、次の三つの側面から見てまいります。�� 悟りを求める心を表現したもの、�� 時の為政者や禅僧の堕落を批判したもの、�� 伴侶の森女(しんにょ)への深い愛情を告白したもの。
収録作品
自賛
長門の春草
春衣にて花に宿る
無題
長禄庚辰八月晦日 大風洪水あり 衆人皆憂ふ 夜 遊宴歌吹の各有り 之を聞くに忍びず 偈を作つて以て慰むと云ふ
森公 輿に乗る
森公の深恩に謝するの願書
特典ダウンロード
ご購入のお客様への特典として、
各回の収録作品を掲載した「知っておきたい 日本の漢詩」ミニテキスト(PDFデータ)
が付属しています。
※商品版の音声と一緒にダウンロードいただけます。
講師:宇野直人(うの・なおと)
昭和二十九年、東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。現在、共立女子大学国際学部教授。著書に『中国古典詩歌の手法と言語』(研文出版)『漢詩の歴史』(東方出版)『漢詩の事典』(共著、大修館書店)など。平成十九年、NHKラジオ「古典講読――漢詩」講師、平成二十年より同「漢詩をよむ」講師。
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