内容紹介
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。
時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。
漢詩は和歌や俳句とともに、永く日本人に親しまれて来た文学形式ですが、漢字ばかりで作られるため、気おくれしてしまう人もおられるようです。
が、そのいかめしい外見から一歩中に入ってみると、まことに多彩で魅力ある世界が現れて来ます。
それは或る種の果物に似ています。西瓜(スイカ)の、あの固い緑色の外皮の中には赤くジューシーな果肉が、また荔枝(ライチ)の、あの固いトゲだらけの、茶色の外皮の中には、丸くて白く、甘い果肉が包まれています。
このシリーズは、漢詩のそのような果実をなるべくわかりやすくお伝えするもので、名作の数々を、時代背景や作者の境遇と合わせてお話ししてゆきます。
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地は、まさしくファンタステイック!と言えるでしょう。
〈第六回 動乱のさなかに〉
至徳2年(757)、杜甫46歳の春。杜甫はまだ軟禁中の身であり、鄜州の家族ともなかなか連絡が取れない中、特に次男の驥子(きし=杜宗武の幼名)の身を思いやって五言排律「興を遣(や)る」を作っています。前年6月に別れた時、驥子は数えで四つ(満3歳)でした。
この詩を作った直後の夏4月、杜甫はひそかに長安を脱出、ぶじ鳳翔(ほうしょう)の仮御所にたどりつき、その忠誠に心を打たれた粛宗によって、左拾遺の官を授けられます。が、早くも翌5月、彼は舌禍事件を起こして粛宗の怒りにふれ、休暇を与えられてしまいました。杜甫はそれを機に、鄜州の家族を訪ねるべく、8月1日に鳳翔を発ちました。五言古詩「玉華宮」はその旅の途中、かつて宮殿であった玉華宮を訪れ、そのさびれたさまを嘆いて作った
もの。
そして鄜州の羌村に到着し、1年二ケ月ぶりに家族と再会した感激を詠んだのが、五言古詩「羌村三首」其の一でした。
収録作品
遣興(興を遣る) 五言排詩
玉華宮(ぎょくかきゅう)五言古詩
羌村 三首(きょうそん)其一 五言古詩
特典ダウンロード
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各回の収録作品を掲載した「ファンタスティック!漢詩ワールド」ミニテキスト(PDFデータ)
をプレゼントいたします。
※商品版の音声と一緒にダウンロードいただけます。
講師:宇野直人(うの・なおと)
昭和二十九年、東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。現在、共立女子大学国際学部教授。著書に『中国古典詩歌の手法と言語』(研文出版)『漢詩の歴史』(東方出版)『漢詩の事典』(共著、大修館書店)など。平成十九年、NHKラジオ「古典講読――漢詩」講師、平成二十年より同「漢詩をよむ」講師。
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