内容紹介
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。
時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。
漢詩は和歌や俳句とともに、永く日本人に親しまれて来た文学形式ですが、漢字ばかりで作られるため、気おくれしてしまう人もおられるようです。
が、そのいかめしい外見から一歩中に入ってみると、まことに多彩で魅力ある世界が現れて来ます。
それは或る種の果物に似ています。西瓜(スイカ)の、あの固い緑色の外皮の中には赤くジューシーな果肉が、また荔枝(ライチ)の、あの固いトゲだらけの、茶色の外皮の中には、丸くて白く、甘い果肉が包まれています。
このシリーズは、漢詩のそのような果実をなるべくわかりやすくお伝えするもので、名作の数々を、時代背景や作者の境遇と合わせてお話ししてゆきます。
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地は、まさしくファンタステイック!と言えるでしょう。
〈第五回 軟禁の日々〉
異民族出身の節度使安禄山が今の北京付近で挙兵したのは天宝14年(755)11月9日。叛乱軍は破竹の勢いで進撃し、黄河を渡り、洛陽を陥れ、翌年6月には早くも都長安に迫りました。徒歩はその一ケ月前、すでに戦局不利の報を聞き、家族を引き連れて鄜州(ふしゅう=陝西省)へ避難し、そこの羌村(きょうそん)という村に居を定めていました。
一方、帝都陥落を悟った70歳の玄宗皇帝は要人たちとともに長安を脱出、翌月には長安西北の霊武に逃れていた皇太子の李亨(りこう)が擁立されて帝位につき、粛宗皇帝となります。新帝即位の報を聞いた杜甫は粛宗に謁見すべく、単身、鄜州から霊武へ向かいます。ところが不運にも途中で叛軍に逮捕され、長安に連行されて軟禁の生活を強いられます。
五言律詩「月夜」「雪に対す」「春望」はその軟禁の日々に、祖国の命運を憂え、家族を思い、戦局を案じ、自分の無力を嘆いているのです。
収録作品
月夜(げつや) 五言律詩
対雪(雪に対す)五言律詩
春望(しゅんぼう) 五言律詩
特典ダウンロード
ご購入のお客様への特典として、
各回の収録作品を掲載した「ファンタスティック!漢詩ワールド」ミニテキスト(PDFデータ)
をプレゼントいたします。
※商品版の音声と一緒にダウンロードいただけます。
講師:宇野直人(うの・なおと)
昭和二十九年、東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。現在、共立女子大学国際学部教授。著書に『中国古典詩歌の手法と言語』(研文出版)『漢詩の歴史』(東方出版)『漢詩の事典』(共著、大修館書店)など。平成十九年、NHKラジオ「古典講読――漢詩」講師、平成二十年より同「漢詩をよむ」講師。
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