内容紹介
岡本綺堂の怪奇小説。いい川魚の料理屋があるというでみんなで食べに来たが、梶田という老人が鯉の洗肉を食べない。なにかわけがあるようだ。
鯉を食べたがらない梶田老人のわけをみんな聞きたがった。梶田老人は話はじめた。
幕末の嘉永六年三月三日、菊屋橋の川筋で途方もなく大きな鯉が生け捕りにされた。不忍の池から流れ出してきたのだろうが、三尺八寸の大物だった。どうしようか思案していると、桃井弥三郎という道楽者の旗本の次男と常磐津の師匠で文字友という女が鯉を食べるからと云って一朱で買い取った。弥三郎が鯉を脇差で突き殺そうとしたところを、若い奉公人(梶田)を連れた和泉屋という商人が通りかかり、恋を助けてやってくれと云って弥三郎に一両を渡し、鯉を龍宝寺にある大きい池に放してやる。しかし鯉は弥十郎から受けた傷がもとであくる日死んでしまった。
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