内容紹介
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。
時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。
漢詩は和歌や俳句とともに、永く日本人に親しまれて来た文学形式ですが、漢字ばかりで作られるため、気おくれしてしまう人もおられるようです。
が、そのいかめしい外見から一歩中に入ってみると、まことに多彩で魅力ある世界が現れて来ます。
それは或る種の果物に似ています。西瓜(スイカ)の、あの固い緑色の外皮の中には赤くジューシーな果肉が、また荔枝(ライチ)の、あの固いトゲだらけの、茶色の外皮の中には、丸くて白く、甘い果肉が包まれています。
このシリーズは、漢詩のそのような果実をなるべくわかりやすくお伝えするもので、名作の数々を、時代背景や作者の境遇と合わせてお話ししてゆきます。
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地は、まさしくファンタステイック!と言えるでしょう。
〈第三回 長安にて〉
杜甫は三十五歳で都長安に出、官職を求めて特別試験に挑み、高官や名士たちと交遊しますが、うまくゆきません。このころの詩には、焦りや不満の情が現れるものもままあります。五言律詩「春日 李白を憶ふ」は、杜甫三十五歳、李白と別れて長安に立つ折の作。つづく七言古詩「貧交行」は「管鮑の交わり」の故事を引用しつつ、自分を認めない世間への憤りと抗議の思いを激しく吐露しています。そして五言律詩「諸〻(もろもろ)の貴公子の 丈八溝に・・二首」は、四十三歳のとき、貴族の子弟たちの納涼の舟遊びに随行しての作。夕刻に舟を出してから風まじりの雨に見舞われ、ほうほうの体で帰路につくまでを時間の経過に沿って詠んでいます。
収録作品
春日憶李白(春日 李白を憶ふ) 五言律詩
貧交行(ひんこうこう) 七言古詩
陪諸貴公子丈八溝携妓納涼晩際遇雨 二首 其一
(諸の貴公子の 丈八溝に妓を携へて涼を納るるに陪し 晩際 雨に遇ふ)五言律詩
陪諸貴公子丈八溝携妓納涼晩際遇雨 二首 其二
特典ダウンロード
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各回の収録作品を掲載した「ファンタスティック!漢詩ワールド」ミニテキスト(PDFデータ)
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※商品版の音声と一緒にダウンロードいただけます。
講師:宇野直人(うの・なおと)
昭和二十九年、東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。現在、共立女子大学国際学部教授。著書に『中国古典詩歌の手法と言語』(研文出版)『漢詩の歴史』(東方出版)『漢詩の事典』(共著、大修館書店)など。平成十九年、NHKラジオ「古典講読――漢詩」講師、平成二十年より同「漢詩をよむ」講師。
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