内容紹介
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。
時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。
漢詩は和歌や俳句とともに、永く日本人に親しまれて来た文学形式ですが、漢字ばかりで作られるため、気おくれしてしまう人もおられるようです。
が、そのいかめしい外見から一歩中に入ってみると、まことに多彩で魅力ある世界が現れて来ます。
それは或る種の果物に似ています。西瓜(スイカ)の、あの固い緑色の外皮の中には赤くジューシーな果肉が、また荔枝(ライチ)の、あの固いトゲだらけの、茶色の外皮の中には、丸くて白く、甘い果肉が包まれています。
このシリーズは、漢詩のそのような果実をなるべくわかりやすくお伝えするもので、名作の数々を、時代背景や作者の境遇と合わせてお話ししてゆきます。
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地は、まさしくファンタステイック!と言えるでしょう。
〈第九回 ふたたび江南へ〉
杜甫と別れた李白は南へ向かい、長江下流の呉・越の地を訪れます。そこはかつて二十代の半ばに、初めて故郷の蜀を出た直後に赴いたところであり、李白にとって感慨深いものがあったことでしょう。七言絶句「越中覧古」は越(浙江省)の金陵にて、同じく「蘇台覧古」は呉(江蘇省)の姑蘇台にて、ともに春秋時代の「呉越の戦い」に思いをはせて作った懐古詩の名作。
そのころの李白は、最初の妻許氏との間に授かった長女と長男を、東魯(山東省)の或る女性に預けていました。許氏は李白が四十歳のころに亡くなり、南陵の劉氏とも既に別れていたようです。五言古詩「東魯の二稚子に寄す」は金陵滞在中、東魯の子どもたちを思って作ったもの。子を思う父の愛がすなおに表れています。
収録作品
越中覧古
蘇台覧古
寄東魯二稚子
特典ダウンロード
ご購入のお客様への特典として、
各回の収録作品を掲載した「ファンタスティック!漢詩ワールド」ミニテキスト(PDFデータ)
をプレゼントいたします。
※商品版の音声と一緒にダウンロードいただけます。
講師:宇野直人(うの・なおと)
昭和二十九年、東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。現在、共立女子大学国際学部教授。著書に『中国古典詩歌の手法と言語』(研文出版)『漢詩の歴史』(東方出版)『漢詩の事典』(共著、大修館書店)など。平成十九年、NHKラジオ「古典講読――漢詩」講師、平成二十年より同「漢詩をよむ」講師。
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