百年間の隠蔽の闇から甦るときめきの濃密文学
入魂の作品、リアルな性愛描写は興奮さめやらぬ不思議な性の桃源郷へ聴く者を誘い込んでしまう。
明治・大正・昭和の著名な作家や文人が名を秘して綴り密かに出版され続けた幻の性文学と作者不明の伝説的傑作艶書シリーズ・第三巻!
【2.泥にあえぐ】
青春の血の沸き返る頃、愛し合った若き男女が、互いに其の恋を握り得た時の意中の満足と喜悦とは、人生一代の間に、嘗て他に比べ得るものはなかろう。が然しこれも永遠に平和を持ち得たならば、誠に幸福ではあるが、恋の曲者は、必ず那辺にか其の影を巧みにかくして、或る時期を窺いつつあるものである。立花敬一は25歳の時に、葉子を妻に娶った。葉子は県立高等女学校を卒業と同時に、敬一に対して大なる尊敬と深き愛着とを以て、敬一に愛撫されると云う興奮した期待を持って嫁いで来たのであった。敬一は此の光栄ある若々しい、穢れをしらぬ女性を受け入れる事の出来た楽しさと嬉しさは生涯忘れる事は出来なかったろう。然し乍ら其の悦楽を味わうと共に、或る黒影が彼の裏面に萌した。それは彼の汚れた前生活を呪わずには居られないからである。本能主義の不可思議な世界を予想しつつ、今、彼女は浪漫主義の春光に其の心を和らげられつつ、多くの期待を以て、処女から人妻としての第一歩を踏まんとしつつあるのだ。期待さるる幻の世界。之は多くの場合、結婚と共に滅するものである。敬一は自己の本能慾を満足させるばかりではなく、異性に対して持つ女の性能、あらゆる美しい観念を、充分に此の結婚生活に依って享楽し得らるるものと思いつめると、彼は呼吸のつまる様な、胸を圧しらるる様な一種の痛痒を覚えた。それほど葉子は純潔であり可憐であった。この尊き犠牲の前に、敬一の性的悪魔主義は如何なる態度をとったか?彼ははじめて浪漫主義の夢と、本能主義の血とを同時に持ちたいものだと思った。敬一は一気に葉子の処女膜を破りたくないと思った。自己の為に一歩々々処女が非処女になる段階を、出来るだけ長く楽しみたかった。そして一般の女の秘すべき事が夫婦と云う関係の為に、其の夫の思う通りに、しかも女の止ぬに止まれぬ許諾を以て、衣を一枚々々と剥がす様に、ある浅ましさを帯びて残りなく暴露されていくと云う、社会的又は公認的性慾的虐待に、名状すべからざる痛痒の感じを味わんと試みた。
※本商品は「幻作発禁 濃密文庫 第三巻」(ダイナミックセラーズ出版刊 青木信光著 ISBN:978-4-88493-305-0 525円(税込))をオーディオ化したものです。
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