内容紹介
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。
時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。
漢詩は和歌や俳句とともに、永く日本人に親しまれて来た文学形式ですが、漢字ばかりで作られるため、気おくれしてしまう人もおられるようです。
が、そのいかめしい外見から一歩中に入ってみると、まことに多彩で魅力ある世界が現れて来ます。
それは或る種の果物に似ています。西瓜(スイカ)の、あの固い緑色の外皮の中には赤くジューシーな果肉が、また荔枝(ライチ)の、あの固いトゲだらけの、茶色の外皮の中には、丸くて白く、甘い果肉が包まれています。
このシリーズは、漢詩のそのような果実をなるべくわかりやすくお伝えするもので、名作の数々を、時代背景や作者の境遇と合わせてお話ししてゆきます。
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地は、まさしくファンタステイック!と言えるでしょう。
〈第十回 出征兵士の妻〉
前回につづいて〈三吏三別〉から一首、「新婚の別れ」を取り上げます。
新婚間もない夫婦のもとにも、徴発の手は容赦なく伸び、夫は叛軍と戦うため激戦地の河陽に出征してゆきます。この詩はそれを見送る若妻の心境を、妻自身の立場に立って詠んだもの。抑えかねる名残惜しさをおしとどめ、夫を激励し、“離れていても心は一つ”と結ぶところは胸に迫ります。
〈三吏三別〉全体について少し触れておきますと、〈三吏〉は「新安の吏」「潼関(どうかん)の吏」「石壕の吏」の三首で、さまざまな場所で官吏に徴発される人々の様子を描き、〈三別〉は「新婚の別れ」「衰老の別れ」「無家の別れ」の三首で、それぞれ新婚夫婦、老夫婦、身寄りのない老人が出征に直面するさまを、当事者の口を借りる形で詠んでいるのです。
収録作品
新婚別(新婚の別れ) 五言律詩
特典ダウンロード
ご購入のお客様への特典として、
各回の収録作品を掲載した「ファンタスティック!漢詩ワールド」ミニテキスト(PDFデータ)
をプレゼントいたします。
※商品版の音声と一緒にダウンロードいただけます。
講師:宇野直人(うの・なおと)
昭和二十九年、東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。現在、共立女子大学国際学部教授。著書に『中国古典詩歌の手法と言語』(研文出版)『漢詩の歴史』(東方出版)『漢詩の事典』(共著、大修館書店)など。平成十九年、NHKラジオ「古典講読――漢詩」講師、平成二十年より同「漢詩をよむ」講師。
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